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お昼休みも終わり間近、ワイワイと賑やかな廊下を大賀見と二人で歩く。

なんだか、まだ信じられない…

私達が両想いだなんて………

大賀見が時折、優しい目でこっちを見てくる。

そんな大賀見の顔を見るだけでドキドキと心臓がうるさい。

恋をするってすごいな…

私をどんどん女の子にしていくんだもん///

今までと景色さえ違って見えるよ。




ガラッ………

大賀見が教室のドアを開けると「キャー」と黄色い声があがる。

ここに戻ってくるまでも女子の視線がハンパなかった。

忘れてたけど、大賀見と付き合うって事はこういうことだ。

この沢山の大賀見のファンを敵にまわすという事。

これからの学校生活…….覚悟しておかなくっちゃ。

私はフワフワと浮かれていた世界から、一気に現実の世界に戻った。

黄色い声があがる中、私は覚悟を決めて自分の席に向かって一歩を踏み出す。

ーーーーーーーーーが、

突然、大賀見が私の手を取り、教壇に向かって歩き出した。

「大賀見///?」

「黙ってろ。」

なに?どうしたの??

わけがわからず言われた通り黙って大賀見について行く。

教壇に立つと、大賀見は何も言わず私の手を離し教室を見渡した。

そして………

バァァァンッッ!

教卓を思いっきり叩いた大賀見。

一気に黄色い声がおさまり、教室中がシーンと静まりかえった。

皆んなの視線が教壇に集まる。

大賀見が私の肩を引き寄せ抱きしめた。

「ちょっ、大賀見///⁈」

「お前は大人しくしとけ。」

私に優しく笑いかけてから前をジッと見据えて

「俺と小辺田 葵は付き合う事になった。コイツに手を出す奴は男でも女でも絶対に許さねぇから。覚えておけっ。以上っ。」

と言い再び私の手を取り、席まで手を繋いで歩く。

静まりかえっていた教室が「ヒュー」とか「キャー」とかの冷やかしや悲鳴の声で溢れた。

席に着くと優衣と滝沢くんがいて、二人とも嬉しそうな顔をしている。

「やるじゃん、大賀見ぃ。」

優衣が大賀見の背中をパシッと叩いた。

「うるせぇよ。」

そう言って、大賀見は少し乱暴に椅子を引き座った。

今までは、こういった態度は機嫌が悪いのだと思っていたけど、本当は照れ隠しなんだとわかった。

素直じゃないところがなんだか子供っぽく見えて可愛い。

「ふふ…。」

幸せすぎて自然と笑みがこぼれた。

「いま、笑ったよな?」

私の手首を掴みニヤリと笑いながら見上げる大賀見。

な、なんか…嫌な予感がするんですけど…

「きゃっ⁉︎」

私は手首を引っ張られ、ストンと大賀見の膝の上に収まった。

「ちょっと、離してよっ。恥ずかしいでしょっ///」

今現在、大賀見の片足に私が座っている状態………。

私は慌てて立ち上がろうとしたけど、大賀見が腰に手をまわしてきたので身動きが取れなくなった。

「絶対、離してやんねぇ。」

クックックッ…と笑いながら、より力を強める大賀見。

「もぉっ!また、からかってるでしょっ///」

離して欲しくて大賀見の膝の上でジタバタする私。

「ハル、そのくらいにしてあげなよ。」

滝沢くんが私の腰にまわっている大賀見の手をそっと解いてくれる。

そして、私を大賀見の膝の上に座らせたままの状態で、滝沢くんは顔を近づけてきた。

私の目の前に綺麗な顔が二つ並ぶ。

滝沢くんは大賀見の顔を正面から捕らえ、ジッと見ていた。

「今回はハルに譲ったけど、僕は小辺田さんを諦めたわけじゃないからね。

もし、彼女を泣かすようであれば、すぐに奪い取りに行くから覚悟しといて。」

滝沢くんの言葉に大賀見の表情が真剣なものへと変わる。

「泣かせねぇよ。涼介の出番はねぇから安心しろよ。」

「はは…だって。良かったね、小辺田さん。」

滝沢くんがキラキラスマイルで私の方を向いた。

け、けっこう…顔が近いんですけど///

ーーーーーて思っていたら

チュッ…

また、抵抗をする間もなく頬にキスされた。

「涼介っ‼︎」

大賀見の手が素早く滝沢くんの胸ぐらへと伸びたが、サッとかわされる。

「じゃ、そういうことで。僕は自分のクラスに戻るよ。」

滝沢くんはそう言って、再びキラキラスマイルで出て行った。

滝沢くん…………

この教室中の変な空気…

一体どうしてくれるんですか?