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今日は快晴で、お昼休みともなると屋上は少し暑いくらいだった。

「今日はお昼休み二人だけだね。」

私は滝沢くんと二人っきりでお昼ご飯を食べていた。

いつもはもっと賑やかなお昼休みなのに…

はぁ…と無意識に溜め息が出た。

優衣とは今日も全く話ししていないし、目も合わせてもらってない。

…白咲くんも同じ。

白咲くんとは、さすがにまだ話す気にもなれないけど。

私がお弁当箱をじっと見つめ考え事をしていると

「ハルは弁当も食べないで、どこに行ったんだろうね?」

滝沢くんが今日もパンをかじりながら言った。

そう、今日は大賀見もなぜか屋上に来ていない。

朝早く家を出てたし、授業中はなんだか難しい顔で考え事をしてるみたいだった。

私にちょっかいもかけてこないし…

大賀見はチャイムが鳴ってすぐに教室を出て行ったから、何か飲み物でも買いに行ったのかな?なんて思ってたけど…そうじゃなかったみたい。

何かあったのかな?

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……それにしても、滝沢くんと二人っきりのこの状況って緊張する。

なかなか滝沢くんと二人っきりになることなんてないから、これは言えってことなのかな?

自分の気持ちに気付いたんだから

この前の告白の返事……しなきゃね?

「あの…滝沢くん。」

私はお箸を置いて、スゥと深呼吸してから滝沢くんに話しかけた。

「なに?」

滝沢くんはニッコリと優しく微笑み、私に視線を向ける。

「こ、この前の事なんだけど…。」

「僕が小辺田さんを好きだと言ったこと?」

「…う、うん///」

そうハッキリと言われると、なんだか恥ずかしいんだけど…

「あの…私…………、他に好きな人がいるのっ/// だから、ごめんなさいっ。」

私はペコリと勢いよく頭を下げ床を見つめた。

「顔をあげてよ。」

そう言って、滝沢くんは私の両肩に手を当て体を起こす。

そっと私の顔を上げさせると、真っ直ぐな視線を向けてきた。

「ねぇ、それって…ハルのこと?」

形のいい唇から発せられた名前に、ドクンッと心臓が波打つ。

「…………。」

私は正直にコクン…と縦に頭を振った。

「…そっかぁーっ。やっぱりなー。」

滝沢くんは両手を床について上を向き、空に向かって叫んだ。

眩しそうに青空を見上げる滝沢くん。

艶やかな黒髪がより綺麗に見え、いつもよりキラキラ度が増している。

こんな完璧な人を振るなんて、私ってばどうかしちゃってるよね?

ーーーってか、さっき滝沢くん「やっぱり」って言った?

「もしかして…バレてた?」

無意識に言葉にしてしまって、慌てて口を抑える。

「僕はずっと小辺田さんのこと見てたから、視線がどこに向いてるのか、わかっちゃうんだよね。」

ニッコリと笑いながら言った滝沢くんの頬には笑くぼが出ていた。

「また、そんな甘い言葉をサラッと言っちゃうんだから…///」

初めて出会った日に見たこの笑顔に、私は心を奪われたのかも知れない。

あと、パパと同じ仕草にも…

滝沢くんは私の初恋の人だったんだよね。

いつもドキドキしてた。

なのに…いつの間にか大賀見のことを好きになってて。

「僕がもう少し早くに告白してたら、なにか違ってたかな?」

滝沢くんから笑顔が消えて真剣な目で私を見つめる。

「えっ?」

「ううん、なんでもないよ。」

またすぐにキラキラの笑顔に戻ったので、私は少しホッとした。

カシャン…

滝沢くんは「よいしょ」と言って立ち上がりフェンスにもたれ下を見る。

「あ…。ハル発見。」

フェンス越しに下を覗いた滝沢くんがボソッと呟いた。

え?大賀見?

私も立ち上がりフェンス越しに下を覗いてみる。

確かに大賀見の姿がそこにはあったのだけど………

「……え?一緒にいるのって、優衣?」

なぜか大賀見と優衣が二人っきりで、人気のない体育館裏で会っていた。

「どうして…優衣と一緒にいるの?」

どう考えても異色の組み合わせな二人なのに。

「ちょっと待って、なんかハルの様子がおかしい。」

「え?」

「いつものような落ち着きがないように見える。とにかく、僕たちも体育館裏に行こうっ!」

「うんっ!」

私達は急いで階段を下り、二人のいる体育館裏へと向かった。