＊＊＊＊＊
「父親と血が繋がってないくせにっ！」
茉莉花ちゃんから放たれた言葉に私の心が悲鳴をあげる。
ずっと心の中にある錘(おもり)。
私とパパは他人同士…。
シングルマザーのママと恋に落ちて、同棲をしていたパパ。
籍を入れようとしていた矢先、ママは交通事故にあって、この世から去ってしまった。
父親がわからない私を身籠ったことで、ママは家から勘当されていたため、お葬式にはママの妹しか来なかった。
当然、私を引き取る親戚もなくて…。
そんな引き取り手のない、しかも血の繋がりもない私を、パパは自分の養子として迎えてくれた。
「血が繋がってなくても、葵はパパの可愛い娘だよ。」
そうパパは言ってくれるけど、いつも自信がなくて心のどこかで
"いつか捨てられる"
とビクビクしている。
言葉に出さないことによって、自分をなんとかその不安から守ってきた。
なのに………
言葉に出されてしまった今、私の中で
"他人"
という二文字が現実となって、私の心に重くのしかかる。
私が茉莉花ちゃんの放った言葉を処理出来ずにいると
「それって…本当なの？」
後ろから聞き慣れた声がした。
「…優衣？」
振り返ると、優衣が怪訝な表情で立っていた。
私達の帰りが遅いので、きっと様子を見に来たのだろう。
「ねぇ、葵。お父さんとは血が繋がってないの？」
「……うん。話してなくてゴメンね。」
胸がムカムカして気持ちが悪い…。
なんだか、頭もクラクラする。
「…………信じられない。」
優衣は俯いたまま、拳をぎゅっと握って言った。
優衣に軽蔑された？
ううん、そんな子じゃない。
そう私は思っていたが、顔をあげた優衣の表情は、今までに見たことがない、とても冷たいものだった。
何も言わずに背中を向けて、来た道を帰っていく優衣。
「優衣っ⁈」
声をかけても返事をしてくれないし、振り返ってもくれない。
どうして？
軽蔑されたの？私…………
優衣に嫌われると思ったら、更に気持ち悪くなり吐きそうになる。
涙も溢れてしまいそうだ。
ダメッ‼︎
泣いちゃダメッ‼︎
大丈夫‼︎
私はまだ大丈夫‼︎
自分に言い聞かせて、なんとか平常心を保った。
「あははっ。優衣ちゃんに嫌われちゃったね。」
茉莉花ちゃんが嬉しそうに笑いながら言った。
私は平常心を保つ事が精一杯で、茉莉花ちゃんに反論する力さえ出ない。
「沢口…俺たちの前から今すぐ立ち去れよ。」
大賀見が怒りを押さえるように、今まで聞いたことも無い低い声で言った。
「沢口さん、本当に危ないから、ハルがキレる前にどこかに行って。」
口調は優しいが真顔で、立ち去る事を促す滝沢くん。
この顔…私がスリッパを捨てられた時と同じ顔だ。
「…………。」
茉莉花ちゃんは二人を見て、真っ青な顔をして慌ててこの場を去って行った。
「大丈夫か？」
大賀見が優しく私の髪を撫でる。
「大丈夫？小辺田さん。」
反対側からは滝沢くんが、優しく背中をポンポンとしてくれた。
「うん…大丈夫。二人共ありがとう。」
この後、広場に戻り昼食をとったが、優衣とは一度も目が合わなかった………。
「父親と血が繋がってないくせにっ！」
茉莉花ちゃんから放たれた言葉に私の心が悲鳴をあげる。
ずっと心の中にある錘(おもり)。
私とパパは他人同士…。
シングルマザーのママと恋に落ちて、同棲をしていたパパ。
籍を入れようとしていた矢先、ママは交通事故にあって、この世から去ってしまった。
父親がわからない私を身籠ったことで、ママは家から勘当されていたため、お葬式にはママの妹しか来なかった。
当然、私を引き取る親戚もなくて…。
そんな引き取り手のない、しかも血の繋がりもない私を、パパは自分の養子として迎えてくれた。
「血が繋がってなくても、葵はパパの可愛い娘だよ。」
そうパパは言ってくれるけど、いつも自信がなくて心のどこかで
"いつか捨てられる"
とビクビクしている。
言葉に出さないことによって、自分をなんとかその不安から守ってきた。
なのに………
言葉に出されてしまった今、私の中で
"他人"
という二文字が現実となって、私の心に重くのしかかる。
私が茉莉花ちゃんの放った言葉を処理出来ずにいると
「それって…本当なの？」
後ろから聞き慣れた声がした。
「…優衣？」
振り返ると、優衣が怪訝な表情で立っていた。
私達の帰りが遅いので、きっと様子を見に来たのだろう。
「ねぇ、葵。お父さんとは血が繋がってないの？」
「……うん。話してなくてゴメンね。」
胸がムカムカして気持ちが悪い…。
なんだか、頭もクラクラする。
「…………信じられない。」
優衣は俯いたまま、拳をぎゅっと握って言った。
優衣に軽蔑された？
ううん、そんな子じゃない。
そう私は思っていたが、顔をあげた優衣の表情は、今までに見たことがない、とても冷たいものだった。
何も言わずに背中を向けて、来た道を帰っていく優衣。
「優衣っ⁈」
声をかけても返事をしてくれないし、振り返ってもくれない。
どうして？
軽蔑されたの？私…………
優衣に嫌われると思ったら、更に気持ち悪くなり吐きそうになる。
涙も溢れてしまいそうだ。
ダメッ‼︎
泣いちゃダメッ‼︎
大丈夫‼︎
私はまだ大丈夫‼︎
自分に言い聞かせて、なんとか平常心を保った。
「あははっ。優衣ちゃんに嫌われちゃったね。」
茉莉花ちゃんが嬉しそうに笑いながら言った。
私は平常心を保つ事が精一杯で、茉莉花ちゃんに反論する力さえ出ない。
「沢口…俺たちの前から今すぐ立ち去れよ。」
大賀見が怒りを押さえるように、今まで聞いたことも無い低い声で言った。
「沢口さん、本当に危ないから、ハルがキレる前にどこかに行って。」
口調は優しいが真顔で、立ち去る事を促す滝沢くん。
この顔…私がスリッパを捨てられた時と同じ顔だ。
「…………。」
茉莉花ちゃんは二人を見て、真っ青な顔をして慌ててこの場を去って行った。
「大丈夫か？」
大賀見が優しく私の髪を撫でる。
「大丈夫？小辺田さん。」
反対側からは滝沢くんが、優しく背中をポンポンとしてくれた。
「うん…大丈夫。二人共ありがとう。」
この後、広場に戻り昼食をとったが、優衣とは一度も目が合わなかった………。
