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山道を1時間くらい登ってきて、今は昼食の準備中。

ここは平坦な広いスペースで、洗い場や木で出来た簡易なテーブルに椅子…いわゆるキャンプ場?の様な所だ。

メニューは、もちろん定番のカレーライス。

野菜を切ってカレールーを入れるだけの簡単なもの。

私と優衣はカレーを作る係で、大賀見と白咲くんは薪でご飯を炊く係

なんだけど……………

「白咲くん、大賀見は?」

辺りを見回しても、大賀見の姿が見当たらない事に気づく。

「なんかー、知らないうちにどっか行っちゃったんだよねー。ひどいよねー。」

白咲くんは、ぷぅと頬を膨らませながら答えた。

あのサボリ魔、どこで何をしているんだ?

「私、電話かけて呼び戻してみるよ。」

私はリュックからスマホを取り出して、大賀見に電話をかけようとしたが

「……無理だ。」

そう言えばココって電波が無かったんだった。

現代の便利さを痛感するなぁ…。

「仕方ない…私、探して連れ戻してくるよ。」

そう言ってから持ち場を離れて、サボリ魔の大賀見を探しに行く。

どこに行ったんだろ?

誰かに聞けばすぐわかるよね?

アイツ…目立つから。

隣のクラスのスペースへ来て、キョロキョロとしていると

「あれ?小辺田さん、どうしたの?」

私の姿を見つけた滝沢くんが声をかけてくれた。

「あ、滝沢くん。大賀見を探してるんだけど見なかった?」

「ハルだったらさっきD組の方に歩いて行ったけど。」

「ありがとう、ちょっと行ってみるね。」

お礼を言ってから私が一歩踏み出すと

「あっ、待って。僕も一緒に行くよ。」

なぜか私は滝沢くんと一緒に、D組へ大賀見を探しに行くことになった。

滝沢くんファンの人達の視線を背中いっぱいに感じながら…………




D組のスペースまで来て大賀見を探したけど、どこにも見当たらない。

「どこ行ったんだろ?大賀見…。」

「ちょっと誰かに聞いてみようか?」

滝沢くんが言うと、聞き耳を立てていた女子達がソワソワし出した。

「きゃー」とか「誰かに声かけるのかな?」「心臓飛び出そう」とか聞こえてくる。

滝沢くんは、いつものキラキラスマイルで近くにいた女の子に声をかけた。

「ちょっといいかな?」

「は、はいっ///」

女の子は真っ赤な顔をしながらも、滝沢くんの顔をジッと見つめながら答える。

「大賀見くんを探してるんだけど、知らないかな?」

「大賀見くんなら、さっき沢口さんと二人であっちに行きましたよ///」

女の子は木が覆い茂ったハイキングコースの方を指差さした。

えっ⁉︎

大賀見と茉莉花ちゃんが⁇

私と滝沢くんは意外な組み合わせに驚き、お互いに顔を見合わせた。

「とりあえず…ハルを探しに行こう。」

「うん…。」

大賀見が茉莉花ちゃんに会いに来た?

なぜ?

茉莉花ちゃんのこと避けてたよね?

その大賀見が茉莉花ちゃんと二人っきりになるなんて…

滝沢くんと私は不思議に思いながら、ハイキングコースの方へ大賀見を探しに行った。