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私…小辺田 葵はただいま人生の中で一番、人の熱い視線を感じています。

女子中高生、OLにママさん…オバちゃんまでこっちを見てる。

「わ、私…ひとりで買ってくるよ。二人は先に家に帰ってて。」

私がいつものスーパーに一人で入って行こうとすると

「は?何しにここまで来たかわかんねぇじゃん。」

「そうだよ。僕達は荷物持ちなんだから、遠慮しないで。」

大賀見と滝沢くんが、私の後についてスーパーに入ってくる。

いやいや、だからーー

君たちが目立ち過ぎるから、一人で行きたいんだってぇーー。

私が学校帰りにスーパーで買い物をしようと公園の前を通ると、なぜか大賀見と滝沢くんが前と同じようにママさん達の熱い視線を集めながら待っていた。

なぜ?

と疑問に思いながら今に至るわけで…

私がカートを押しながら食材を選んでいると

「ーーで、今晩のおかずは何?」

滝沢くんが私の肩越しに品物を見てくる。

相変わらず…ち、近いよ///

「涼介には関係ねぇだろ。」

大賀見が滝沢くんに、後ろからガッと腕をまわし引きずって行った。

じゃれ合っているイケメン二人の姿を見て、店内は色めき立っている。

なんだかんだと仲が良いんだよね、あの二人。

今日の食材のレジを済ませると、二人が荷物を持ってくれた。

女子の熱い視線を背中に感じながら、スーパーを出ると

♪♪♪♪〜

私の鞄の中からLIMEの着信音がなる。

この音はパパだっ‼︎

私は立ち止まり、急いで鞄からスマホを取り出し確認をした。

大賀見と滝沢くんは私が立ち止まった事に気づかず、先を歩いて行ってしまう。

まぁ、ちょっとくらい遅れて歩いててもいいよね?

LIMEを見る間だけだし…。

今みたいにパパから毎日のようにLIMEが送られてくる。

私の事を気にかけてくれて嬉しいと思う反面、早く美咲さんとのとこを認めてあげなくちゃとも思う。

美咲さんとの結婚を認めるということは、私が一人で生きていく覚悟を決めるということ…

まだ…無理だ。

パパを失うという覚悟…今の私にはまだ出来ない。

スマホを見つめたまま、考え事をしていると

「かーのじょっ。なーにしてるの?」

知らない金髪とロン毛の男の人が、声を掛けてきた。

誰?

この制服…近くの男子校の人かな?

「何もしてません。じゃ…。」

そうひと言だけ言って、立ち去ろうとしたら

「チョイチョイ待ってよー。冷たいなー。」

金髪の男の人に力強く腕を掴まれて引き止められた。

「痛っ。ちょっと、離してよっ!」

金髪男の手を振り払おうとしたがビクともしない。

「俺らと一緒に遊んでくれるんだったら、離してあーげーる。」

「はぁ?遊ぶわけないでしょっ!離してっ!」

「いいねー。俺、気の強い女って大好物っ。」

「俺もー。」

「離してってばっ!」

私は拘束されている手を、なんとか外そうと必死になるが外れない

ーーーーーはずなのに

気がつけば私の腕を掴んでいた金髪男は、道路に尻もちをついていた。

「お前ら、誰に声かけてんの?」

頭上から聞こえてくる低い声…

私はその声の持ち主に肩をぐっと引き寄せられた。

「お、大賀見///??」

大賀見の意外に逞ましい腕や胸にドキッとなる。

「いってぇなっっ!何すんだよっ‼︎」

どうやら大賀見が金髪男を押し退けて、尻もちをつかせたみたいだ。

「あ?何か文句あんの?」

大賀見は金髪とロン毛の男を冷たい目で見下している。

金髪が勢いよく立ち上がり、拳を握って大賀見に振りかざしてきた。

殴られるっ!

「やめろっ!ヤバイって!」

ロン毛の男が危機一髪で金髪を止めた。

大賀見は、じっと金髪を睨んだまま微動だしない。

「止めんなよっ!」

金髪はロン毛を振り払おうとしたが、必死に押さえつけられていて動けない。

「そうそう、金髪くんを止めて正解だよ。ハルは怒ると手がつけれないからね。」

滝沢くんがニッコリと笑顔で、ロン毛の肩をポンポンと叩く。

「そうだよっ、やべーよ。コイツ大賀見だよっ!」

ロン毛が金髪に言うと、金髪の顔色が明らかに悪くなり、二人は走ってどこかへ行ってしまった。

なに?大賀見って有名人なの?

「…なに絡まれてるんだよ、お前。面倒くせーな。」

大賀見はパッと私の肩から手を離し、荷物を持って歩き出した。

「助けてくれて…ありがとう。」

私の声が聞こえてるはずなのに、無視してスタスタと早足で歩いて行ってしまう。

「あれって、ハルは照れてるだけだから気にしないでいいよ。」

滝沢くんが私の耳に手を当てコソッと教えてくれた。

そっか…照れてるんだ///

ふふ…ホント素直じゃないな、大賀見は。

この日は、また新しい大賀見の一面を知った。