時を狂わせる者と 復元する者

人の居なくなった遺跡の 宝石の 中の水が泡立ち始める。

「…?」ゆっくりと目を開けると― 私の 知らない世界

此処は何処? 知らない… 怖い。

紅月… 紅月…ッ!!

唯一の身内の名を呼ぶ。 いつもなら反応がある筈だ。

なのに… 応答が無い。

さほど高くない水槽の中を泳ごうとしたが

両足に繋がれた鎖が 自由を奪う。

「…!!」どうにか取ろうと足掻いてみるが、 努力もむなしく全く外れる気配もない。

ふと、 床にキラリと光るものが。

不思議に思い、 拾うと錆びた鍵だった。

指につくあの独特の サビの匂い…

試しに鎖の 鍵穴に さしてみたら意外と開いた。

自由になった足で水を蹴り、 水面に顔を出した。

「嘘…?!」

見慣れない光景だった。 頭の中が真っ白になり何も信じられなかった。