ある日の彼は、いつもと少し違っていた。
『...君は死にたくないって
もっと生きたいって、思わないの?』
そんな言葉に私は、ただ笑った。
私は幼い頃に、両親を亡くした。それから、親戚を転々として、私の居場所なんてどこにもなかった。高校卒業と同時に一人で暮らすようになった。
幼い頃から、人の顔色ばかり伺っていた、周りに繕うことに必死になって、いつの間にか自分を見失っていた。
まるで、空を飛び交う鳥の群れの中、周りに合わせて、流れに合わせて。群れの中から遅れないように、省かれないように、懸命に羽ばたく1羽の鳥のような。
歩き方も解らないまま、過ごしてきた。


