お互いが何日か会えない日が続くと、おれたちはみるみる元気がなくなりちっとも飯を食わなくなるから、高宮家も相澤家の人たちも毎日何時間かおれたち二匹が会う時間をつくってくれるようになった。



 もう高宮さんは、塀を乗り越える必要はなくなった。


 玄関の門を開けてもらい、おやつを首にいっぱいぶら下げて今日も彼はやってくる。

 汚れてくしゃくしゃだった毛は、まだ完全ではないけれど以前みたいなふわふわの毛並みに戻りつつあった。

 でも、ございますおばさんは、昔ほどにはコンクールに執着していないらしい。
高宮さんが生きて側にいてくれるだけでいいと、おばさんは言ったそうだ。




 彼が家に帰ったその日、彼女はどれほど心配したか、どれほど淋しかったか、涙ながらに何度も語り高宮さんを抱きしめて眠ったそうだ。


 彼の姿を見つけると、おれは、嬉しくてシッポをぱたぱたさせてくるくる回る。

 わんわん吠えて彼に飛びつく。

 平和で幸せな時が流れる。



 それでも時々、考える。



 二匹で過ごした日々を……

 あの時感じた切なさや、

 優しかったおばさん……

 悲しみのまま死んでいった仲間たち……。




 いつか遠い思い出になっても、彼らのことは忘れない……。