柴犬~相澤くんの物語り

 おれたちの入っている檻以外にもいくつか檻があるみたいで他の場所からも高宮さんの叫びにつられて

 「助けて~!」

 「ここから出して~!」

 という声が辺りから響き渡ってきた。



 「無駄じゃよ、何を言っても……」

 仕切りの隣から老犬らしい、しわがれた声が高宮さんに話しかけてきた。


 「なぜ、そう言い切れるんですか?」

 高宮さんが声の主に尋ねる。


 「簡単じゃよ。ここに来た時点でワシらは、もう世の中に存在していないのと同じなんじゃ。人間たちは、汚らしい野良犬が近所からいなくなったと、せいせいしている。誰もそのあとのワシらの運命になんて関心がないのさ」


 「そ、そんな事……」

 高宮さんは、うなだれ吠えるのをやめた。

 「ここにいるほとんどの犬が、以前私が嫌っていた野良犬なんですね……だけど生きてるだけで、その存在自体が邪魔だなんて……」