柴犬~相澤くんの物語り

 おれは苦しくてゼイゼイ言いながら彼を怒鳴りつけた。

 「なんで逃げなかったんだよ?!」

 「だって、私達何も悪い事してませんよ。それに人間は私達に友好的じゃないですか。私の主人も、昨日のおばさんだって……」

 「バカ! おれたち、捕まったんだぞ! 殺されるんだぞ!」

 「……なぜ殺されなくてはいけないんですか?」

 「おれたちが野良犬だから……野良犬は、人間たちにとっていらない存在なんだ……誰にも迷惑かけないように、ひっそり暮らしてても邪魔なんだよ」



 さっきまでの怒りの感情は消え去り、あとには、得体の知れない恐怖心が残った。

 「どうしよう、高宮さん……おれたち殺される」

 体ががたがた震える。


 「相澤君、だぁいじょうぶですよぉ。君は死んだりしませんよ。第一、私がそんな事させません」

 ニッコリ笑いながら彼がおれの頭を舐めた。



 「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないよ……」
 真っ青になり、床にうずくまる。