そして、本当に次の日やってきた。

 いつものように昼寝をしていたおれの隣にいつの間にかちょこんと腰を下ろしていて、ふと目を開けた瞬間、ギョッとした。

 「わあっ、びっくりした! なれなれしいやつだな。あっちいけ」
 シッシッと、うしろ足で追い払った。

 「そんなに私の事嫌いなんですか?」

 「べっ、別に嫌いってわけじゃねえけど。おれ、あんたのこと全然知らねえし」

 変なヤツ変なヤツ……すっかり眠気も吹っ飛んじまった。

 「良かった。嫌われてたらどうしようと思いました」

 笑っているそいつを見ながらおれは尋ねた。

 「あんた、友達いないのか? おれは引っ越してくる前は近所に仲いいやつがいてよく一緒に遊んだぞ」

 「この近辺にはいませんがコンクールに行くと何匹か知り合いはいます」

 「ふーん、コンクールねえ……あんた、そんなのに出て楽しいの?」
 少し皮肉った目でそいつを見た。

 「ハイッ。賞もたくさん獲得しましたし主人も喜んでくれますしね」

 「それが、あんたの価値感なんだな。まあ、いいけどさ。おれ、シャワーされんの嫌い。いつも大騒ぎだ」

 「えぇ? シャワー嫌いなんですか? とてもそんな風には見えません。すごくキレイな毛じゃないですか」

 「えっ、そうか? だけどおれ、ただの柴犬。あんたみたいに身だしなみに金かけてねえからな」

 「私のは長毛だから仕方ないんです。でも、私は君のセピア色に輝く毛並み、一目で好きになりましたよ」
 そいつがニッコリ笑う。

 「あ? まあ、ありがとう」


 なに照れてんだろおれ。