「キキーッ」
タイヤが外れるのかと思う程の大きな音がしたと同時に私は誰かに押されて道路の脇に膝をついた。その瞬間、遅れてきた「ドンッ」という鈍い音が耳に響いた。私の前で何が起きたのかハッキリと理解することはできなかったが、私を押した人。愛する彼が守ってくれたことだけは理解できた。立った膝に激痛が走ったがそんなことを気にせず彼のもとに駆け寄った。彼は命の終わりだと分かるような顔をしていて、冬の寒空で冷えた彼の手が私の涙を拭い
てくれた。「お前の幸せを願ってるよ」と力のない笑顔で笑った彼は目を閉じた。その日から私の時計は止まった。