空は青くて澄んでいる。
あたしの心は正反対、淀んでる。
とぼとぼと学校まで歩いていく。
そうすると・・・
横をかっこいいお兄さんらしき人が通った。
思わず振り返ってしまった。
あの制服は、黎明学園の制服、お姉ちゃんと同じだ。
あたしももう少し頭が良ければそこに通えたのにな、と思ってぐぬぬ、となってしまった。
ああ、もうそんなこと思ってもどうにもならないんだけど。
それにしてもさっきの人、格好良かったな・・・
爽やかな王子様みたいで。
あたしはその人の呼び方を速攻「王子様」とした。

△▽△▽

「実奈?なによボーっとして。好きな人でもできたの。」
ちょっと動揺してしまう。
「な、なによ。そんなわけないじゃん・・・」
どんどん声が小さくなっていく。
「ふーん。ま、いいけどね。」
あたしの唯一の友達、巡 春(メグリシュン)、通称、シュンシュン。
くるくるとした猫毛をもち、か弱そうに見えるが実は強い高1にしてレギュラーの座に座っているバスケ部員。
だが心はとても優しい。
ちなみにあたしはイラスト部。
部活は違っても、性格が違っても趣味とか、あと色んな所がすごく合うんだ。
「そうだ、実奈!」
「なに?」
春は続けた。
「明日、黎明で文化祭あるんだよ~行く?いや、行こう!」
明日は土曜日。暇だしまぁいっか、位の心でオッケーをだした。
たぶん今朝のことも無関係ではあるまい。

△▽△▽

「ただいま・・・」
ドアをガチャっと開ける。
すると、お姉ちゃんが出てきた。
「おかえり。」
・・・お姉ちゃん・・・。
「今日はどうだった?部活では何やったの?」
「・・・適当に話して終わった。」
お姉ちゃんは――コンプレックスを抱いていることもあって――苦手だ。
そんなあたしの心も知らず、やわらかい声と表情で話しかけてくる。
「そう、楽しかったのね?」
「うんまあ。」
別に楽しくもなんともなかったから、言う事もない。
「じゃああたし、勉強あるから」
勉強をダシに、あたしはそこから逃げ出した。
あとでおやつもってくねー、というお姉ちゃんの声が、後ろを追いかけてきた。