「わー!さすが時実ちゃんね!また主席とったの?本当自慢の娘よ!」

「時実、またコンクールで入賞したのか?・・・本当、家の自慢だな」

-菘 実奈 の場合

「・・・いってきます」
静かにドアを開けて、家を出る。
あたしは独り、孤独。
家族に見捨てられた孤独で空っぽな人間。
あたしなんかと全然違う、違いすぎる、お姉ちゃん。
優秀で、あらゆる面に通じていて、優しくて、格好良くて可愛くて。
ああ、もう嫌になっちゃう。
あたしは勉強もお姉ちゃんよりできなくて、可愛くなくて、不器用で。
皆絶対あたしを見て言う。
「あれ?お姉ちゃんは優秀なのにね。」
もう聞きなれ始めてしまいそう。
ああ、本当に。
お姉ちゃんより目を引かない、地味なあたし。
あたしはあたしなんだから、
ちょっと、ねぇ、
ほっておいてよ、
あたしとお姉ちゃんを比べないでよ・・・