八坂さんが扉を引いて、部屋に戻ったのが見えた。
廣井さんはまだ電話中なのか、姿はなくて。
気付いた眞子が、黄色い声で呼び止める。立ち止まった八坂さんは、何か言いがかる柊介を涼しい顔で見下ろして___________
その時、左手元上で携帯が震えた。
両手を蟹に取られたままながら、机上を振動で移動し始める姿が気にかかる。
無機質なiPhoneのブラック。カバーなし。
この携帯。
八坂さんのだよね?
チラリと視線を三人へ飛ばして。未だ盛り上がる様子を確認して、また視線をiPhoneへ。
それはあわや、机上の端まで持ち主を探し移動していた。
やばい。このままじゃ落ちる!汗
空いた肘で取り抑えようと。
画面を覗こうとした、その時___________
エ「八坂さん。携帯が鳴ってます。」
一瞬のタッチの差で、エリーの手の平が取り上げた。
いつの間に、蟹まみれだった手を拭きあげたのか。あっという間に私の届かないところまで、高く携帯を掲げる。
八「いいよ、置いておいて。」
エ「けど、もうだいぶ長くなってますよ。」
問答無用で、そのまま差し出すから。
動じなかった八坂さんも、つられて左手を差し出して。
画面を一瞥すると、そのまま部屋を出て行った。
眞「あーあ、また八坂さん行っちゃった・・・。」
柊「騒々しい奴だな。ちっとも落ち着いて食事が出来ない。」
眞「いやいや、あんたらが来てからだし。怒
ていうかいつまでいるの?!廣井さん連れてさっさと帰ってくださいよ。」
柊介がキッと目を剥いたのをしり目に、眞子は「エリー、ドリンク!」と杯を上げた。
エリーが笑いながら、ドリンクメニューを眞子に差し出して。
ここでチクリと、記憶が痛む。
眞「十和も何か頼む?」
『ううん、大丈夫・・・。』
あれ?
なんだろう、これ。
さっき何か、違和感だった?
柊「十和には、そろそろ何かジュースを頼んでやってくれないか。あまり酒が強くないから。」
眞「十和、まだ飲めるよな?私と同じモヒートにしよっか。」
柊「人の話を聞けっ!汗」
何が、引っ掛かってるんだろう。
この感じ、さっきのどこに引っ掛かってる?
エ「藤澤。」
どこが違和感___________
エ「何か頼まないと、須藤たちが喧嘩してる。」
___________ああ。
エ「コーラでいい?」
エリー、だ。



