個室の外、廊下を伺っていた視線を。
エリーの一言が引き戻す。
黒目がちな瞳が。
下ろした前髪の下で、真っ直ぐに私を見据える。
エ「すげぇ妬いてる。この状況にも、こうなった経緯にも。」
一瞬の思考停止の後。
______________汗!!!
こっ、この状況で、そんな事私に言う?!
『あっ、や、これにはね、不可抗力というか、私には抗えなかった壮大な社内事情があって、』
パニクる私から目を離さないまま。
エリーの形の良い唇が、何かの言葉をサラッとなぞった。
なに?声を発さなかったから分からない。
思わず、釣られて。
『(なに?)』
私も唇の動きだけで尋ねる。
エリーは微笑んで。
目尻に、可愛らしい笑い皺を寄せて。
ゆっくりと、もう一度唇を開く。
なになに?今度は当てるよ?
身を乗り出して、彼の口元に集中。
と?と。
と、か、・・・
______________!!!
「失礼致します。」
意図を理解した身体が大きく仰け反った瞬間。
木戸を引いて、仲居さんが上品に顔を出す。
「お決まりですか?」
エ「はい。生三つとシャンディガフを。それと食事が__________」
何事もなかったかのように、爽やかな笑顔で注文を取り仕切るエリーと。
未だ、跳ね上がった心臓を持て余している私。
燃えた喉を冷やそうと、もう何度目かのお冷に手を伸ばして、思いっきり真上に煽った。
“トリカエス”
「取り返すよ」って。エリー、そう言ったよね?
勘違いでなければ、この流れを出来るだけ冷静に辿れば。
取り返すって、私を取り返すって意味だよね?
エ「一旦それでお願いします。」
エリーの横顔が眩しく輝く。
骨っぽい顎のラインと、浮き出た喉ボトケ。
取り返すって、なに?
蘇る、あの夜の囁き声とキス__________
だめ!!喉が熱い!!!涙
『__________ひっ!!』
またしてもお冷に伸ばした手に、隣から大きな手が重なった。
辿れば、もう片方の手で相変わらずの頬杖をつく八坂さん。
重なった右手が猛烈に燃え出す。
『な、なんですか?!こんな時にふざけないで、』
八「やめてよ。」
『はい?!』
八「俺の。」



