唇トラップ


#眞子side



立ち止まる私を他所に。

緊迫感を放ちながら、回り始める二人の会話。




エ「女性に甘い物なんて贈るんですか?」

八「エラく世話になってね。」

エ「初耳だな。勝手に困りますよ。」



エリーの横顔が、氷点下零度で微笑む。



八「お前の許可がいるなんて、それこそ初耳だ。」



八坂さんの瞳が、色気を滴らせながら細くなる。



ちょい待て。なんだこれ。汗
始まった途端、エンジン全開で突き進んでません?

二人とも、直接十和子に触れない分。
探り合い感がヒートアップして怖いんですけど!汗





『そっ、そういえば例のサッカー大会って、』

エ「邪魔しないでくださいよ。」

八「どっちが?」



話を変えようと投入した一言は完全無視され。
もはやこの二人には、とうに私なんて見えていない。



ていうかさ、そもそもエリーのこの物言い。

八坂さんは先輩でしょ?しかも、エリーの部署を統括するところの課長代理でしょ?
こんな失礼きわまりない応対でいいのか??

だいたい、こんな横暴な振る舞い。

エリーにしては珍しい。





引っ込んでろ、という事なのだろうから。
冷戦を続ける二人の間で、カフェラテに唇をつけた。

向かいのテーブルの女子グループが、チラチラと視線を投げかけてくる事に気付く。
期待を込めた瞳で、八坂さん、エリー。そして私を伺いながら頬を寄せる。

・・・そっか。
ぱっと見、私がこの二人に取り合われているように見える?




そっかそっか。

・・・うん、悪くない!むしろ凄くいいっ!幸
この際存分に浸らせてもらおう♡





八「なぁ、十和子って甘党?」

即、八坂さんの十和子発言で。短い幸せな夢から覚めた。



『そうっすね、甘党といえ、』

エ「好きですよ。洋菓子より和菓子にしてください。」



私の代わりに。

敢えて近距離を感じさせながら答えたエリー。
八坂さんは、その攻撃力に気付いてか気付かぬフリか。



フワリ、と。
また目を細めただけだった。