眞子のネイルは、先週の桜色から透明なホログラムに変わった。
オレンジ色の照明を受けて、星みたいに瞬く。
『だってね、エリーに“眞子が好きなの?”って聞いたら“そうだ”って言うんだもん。』
恥ずかしさが悔しくて。エリーのせいにして強がってみせるけれど。
「十和が聞いたのは、“好きなの?”じゃなくて、“好きなんでしょう?”だよ。
だからエリーは否定しなかったの。」
そうだったっけ?なんで眞子が知ってるの??
エルダーフラワーの媚香。頬が蒸気する。
「エリーから頼まれたの。“藤澤が、俺が須藤を好きだと思ってる。そういうことにしておいて。”って。
何で?って聞いたら、“眞子が好きなんでしょう?”って聞かれたからって。どうして否定しなかったのか聞いたけど、エリーは笑って何も答えなかった。
私が気づいたのはその時だよ。」
思いもよらぬ種明かしに、ますます言葉に詰まる。
「好きな人の可愛い発見を。エリーは否定したくなかったんだよ。」
楽しかった記憶を辿るように。
眞子の表情は優しかった。
その記憶の中に私もいるのかと思うと、胸が温かく照れた。
『眞子は凄いね・・・。私が逆だったら、きっと気付かなかった。』
「あんたが鈍いの!笑
エリーはいつも十和ばっかり見てたよ。多分、廣井さんも気づいてたと思うし。」
『えっ!!!』
廣井さんも?!汗
もしそうなら、私たち四人の中で、私だけが長い間トンチンカンだったことになる。
恥ずかしすぎる・・・。涙
だけど・・・今思えば、辻褄が合わない点もある。
私に柊介を引き合わせてくれたのは、エリーだ。
『ねぇ、エリーは何で私に柊介を紹介したんだと思う?』
「ああ、それね。私も一瞬、エリーはどMなのか?って疑ったんだけど。
あの頃十和は、既に清宮さんのこと好きだったでしょう?エリーのこと迎えに行くついでに、コソコソキャーキャー騒いでたじゃない。だからだよ。」
『それなら眞子だって!ていうか、柊介に騒いでたのは別に私だけじゃなかっ、』
「だーかーら、十和に紹介したんじゃない?よかれと思って、十和に紹介したんだよ。」
ストン、と。
何かが腑に落ちた。
「エリーは、十和のために。
清宮さんを、他の誰でもない十和に、引き合わせてくれたんだよ。」
眞子の言葉は、まさに今心に浮かんだ答えと全く一緒だった。
「長いこと見てるけど。エリーは十和に、十和を思っての事しかして来なかった。」
『うん・・・。』
それは十分すぎるほどの、身に覚え。
「エリーは、清宮さんの浮気騒動の時も怒らなかったじゃない?なぜか庇うようなこと言ってさ。」
そういえば、柊介を罵る眞子に賛同して来なかった。
「それは、自分が私と一緒になって騒いだら、十和が可哀想だって思ったんじゃないかと思う。」