この桜を見て、君は何を想う

「亮のこと、気になってるんだ?」


背後の高いところから、車椅子を押す先生の声がした。


「別に」


それを冷たくあしらう。

それでも、私の体は正直で。


「顔、真っ赤っすね」

先生の声で、ますます体が熱くなった。







『1126』

その部屋番号の前で、車椅子の動きと先生の足音がストップする。



「ここ、今日から2週間藤井さんの部屋だからね」


先生が右手を大きく伸ばして扉を開ける。

そのまま、部屋のベットにまで寝かせてくれた。



「じゃあ、なにかあったら近くの大人に言ってね。
なるべく動いて欲しくないんだけど、どっか行く時はこいつ使って」


そう言って差し出されたのは、さっきより便利そうな車椅子。


「これなら自動だし。疲れないから」

先生はそう言い残して、部屋を出て行った。