「セシル、山口さんのこと、好きになりかけてる」
「好き?」
「そう」
「確かに、声は好きよ。でも、山口さんのこと、まだよく知らないし……」
「昔から、セシルってそうじゃない? まだよくわからないから、つきあってみるって言って……」
「そりゃあ、昔はそうだったかもしれないけど……。でも、山口さん、パリだよ? なんで、つきあう話になるの?」
「セシルのことだから、遠距離もありなんじゃない?」
「確かに、遠距離恋愛、多かったわ。でも、わたし、もう結婚してるのよ? 今更、遠距離もないでしょ?」
「ないって、言い切れないところが、セシルなんじゃない?」
「なんなのよ、それ」


