ある日の午後、ふとセシルは山口にもらった名刺の電話番号に国際電話を掛けてみた。

「ハロー?」
なぜか英語で山口が出た。

「山口さん? 二月にパリでお世話になった、横浜の葵と申します」

「あぁ〜。どうしたの? 今、どこから?」

「横浜です」

「そうか。なんかあった?」

「いいえ。あの、お手紙、届いたかなと思って」

「あぁ、ごめん。届いてるよ。ありがとう。俺、ものすごい筆不精なんだ」

「あぁ、だったらいいんです」