気がつくと、森の中にいた。
目の前には、大きな鳥居がある。
見覚えのないその光景に、唖然としていると、何処からともなく声がした。
「こちらです。」
幸助さんの声だ。
あった時とは、違い全くカタコトではなくなった。
「幸助さん!」
薄暗い森は、何かを誘うように僕の心を蝕んでいく。
特別、ひとりが怖いわけでもない。
暗いのが怖いわけでもない。
それでも何故か、恐怖を感じた。
「こちらですよ。」
また声がした。
でも、今度は後ろに小さな光が灯っているのが、わかった。
即座に振り返って後ろを見た。
そこには、1匹の狐がいた。
「どうしました?」
その狐は、幸助さんの声を発した。
幸助さんなのだろうか?
でも、やはり何度見たって狐は狐。
「幸助さん?」
狐は小さく頷く。
「私はここで、マスターの名前を知りました。」
「どういうこと?」
「ここに来ると、何故かこの姿になってしまうのです。私が記憶をなくした時、気づけばここにいました。そして、不思議なことに、ここの風景のみ、どこかで見たような、長い間見続けていたような、そんな記憶があるのです。」
「、、、、、。」
「そして、ここに来ると不思議な少女に会えるのです。」
「少女?」
「ええ。」
「彼女は今まで毎回のように私にこう言ってきました。
『思い出して欲しい。』
と、、。」
