マスターは僕を見て言った。
「ただ、ほんの少し悔しくはあるけれど。」
僕がこの人たちを忘れてしまったことで
なぜ、マスターが悔しがるのか?
僕なら、分かるけど、記憶力の乏しさを悔やむ、みたいな?
「なんで?悔しいの?」
「貴方達を護らなきゃいけなかったから。私は、果たせなかったから。それだけ。」
状況が読めない。
どうしてマスターが僕を?
いや、その前に僕達って僕の他に誰かいるの?
聞きたかったけど、マスターが、あまりにも悔しそうにするから、なんて言ったらいいのか
言葉が出なかった。
「マスターの名前は何ていうの?名前を聞けば思い出すかもだし!」
「それは言えない。」
「なんで?」
「あなたが自分で思い出さないと、貴方がの記憶が戻った時、私のことを忘れてしまうから。」
「名前を知ってしまったら、記憶が戻った時に、その人のことだけ、忘れちゃうってこと?」
「まあ、そんなところ。」
「じゃあ、僕の他には誰がいるの?記憶をなくした人って、誰かいるんでしょ?マスターさっき、貴方達をって言ってたし。」
「、、、、、。」
「マスター、ねぇ?」
その時、今までずっと黙っていた、幸助さんが言った。
「ワタシもそのひとリデス。」
幸助さんはたまにカタコトになる。
どうしてだろう?たいして意味はないのかもしれない。
というか、幸助さんも僕と同じってこと!?うそでしょ?
「ワタシも過去ノ記憶がアリマセン。」
「えっ?でも、マスターのことは知っているんでしょ?」
「マスターというのは、ワタシが以前そう読んでいたとマスターからキイタのデス。」
そうなんだ、、、。
「ちなみに、マスターなんて呼び方をしていたのは幸助だけだ。」
「デスが、、、。」
幸助さんはマスターを一度横目で見た。
「どうした?幸助?」
「ワタシはマスターの名前を知ってイル。」
えっ、、、。
「、、、、!」
マスターがなぜ!?と言いたげな表情を浮かべた。
どうして、幸助さんは?
いやそれ以前に、マスターの名前を知っているということは、、、、。
マスターのことを、、!
