列車が見えなくなって私は泣いた。
『ぁぁぁあああぁぁ...ぁ、あぁ、、
史郎さ...ん...嫌だよ...離れたくない...離れたくない...
史郎さん...史郎さ......』
声が枯れてしまいそうなほど泣き叫んだ。

1人の女の方が私に近づいて、
『大丈夫。大丈夫。帰ってきますよ。必ず...』
と私だけに聞こえる声で何度も何度も囁いてくれた。
けれど彼女ももういない列車を見ながら泣いていた。
私たちの涙は地面にボタボタと音をたてながら落ち、
弾けて濃く、地面に色付く。
それでも、彼女は強い目をしていた。

史郎さんが亡くなったことを告げる手紙が
届くまでの苦悩はこの時の私はまだ知らない。