「奈々ちゃんなんか嬉しそう」


私の向かいに座ってジュースを飲んだ姫ちゃんは不思議そうにそう言った。


そろそろお盆の今日は、念願の姫ちゃんと遊ぶ日。


姫ちゃんの家の周りの方が遊べる場所は確実にあるんだけど、姫ちゃんの希望で私の家で過ごすことになった。


なんでも『奈々ちゃんがいつもどこから来てるのか見てみたい』ということだそう。


「あ、実は今日ね、お母さんが帰って・・・」


テンションが上がった私は、思わず普通に嬉しそうな理由を話してしまいそうになった。


でも、まだ誰にもお母さんが入院してるとは言ってないんだ。


琴音が学校に行けなくなった理由でもある『かわいそう』と思われたくないから。


「ん?お母さんが帰って来るん?

じゃあ久しぶりにお母さんといっぱい話せるんやね」


でも、姫ちゃんはごく普通に私の言葉に応じてくれた。


「えっと・・・私、お母さんが普段家におらんって言っとったっけ」


「ううん、きいてないよ。

でも、なんとなくそうかなって思いよった。

お弁当自分で作りよるらしかったし、時々きく家の話でなんとなく」


あ、そうだったんだ。


私は自分で言わなければ分かることはないと思い込んでいたけど、こうして私のことを見てくれる友達には分かっちゃうんだ。


「そっかぁ、ごめんね姫ちゃん。

私のお母さん、実は入院しとって・・・。

かわいそうって思われたくなくて黙っとったんよ」