私が急いで言うと、お兄ちゃんは納得したみたいで『そっか』と言った。
私は下に敷く用の大きなタオルと、和希を拭く用の小さなタオルを持ってまた玄関に戻る。
和希は合羽を脱ぎ終わって、自転車にかけているところだった。
それにしても髪の毛びしょ濡れじゃん。
お風呂に入ってるとごはん冷めちゃうから、せめてドライヤーで乾かすくらいはした方が良いよね。
「和希、頭拭けたら靴下脱いで足も拭いて洗面所行ってね」
靴も濡れてるみたいだから、少しの間だけでも中に新聞紙を詰めたほうが良い。
靴下を洗う時間はないからナイロン袋に入れて・・・。
私がせっせと動いていると、和希がじっと私を見ていることに気がついた。
「何?」
「いや・・・なんか奈々、母さんみたい」
笑いをこらえながら言われてはっとした。
確かに、何から何までしすぎていたかもしれない。
これが琴音だったら自分でしてもらうんだけど、和希は一応お客さんだから。
うちの勝手は一応は知ってると思うけど、100パーセントじゃないもんね。
「それって老けてるってこと?」
冗談で和希を困らせてやろうと思って言ってみたけど、効果は全くなかった。
私の言葉なんて無視して涼しい顔して髪の毛を拭いている。
しょうがないなぁ。
替えの靴下とドライヤーを準備してあげよう。