「俺まで良いんですか?」


和希はびっくりして包みを受け取れずにいる。


私はさっさと受け取っちゃったけど、それでもびっくりはしてる。


だって、入院中のお母さんからお祝いをもらえるなんて思ってなかったから。


「当たり前よ。

いつも奈々のこと面倒見てくれてありがとう、って気持ちも込めてね」


『ほら、受け取って』とお母さんに促され、和希はようやく手に取った。


「開けて良い?」


「どうぞ」


私は嬉しくて待ちきれなくて、急いで、でも丁寧にリボンをほどく。


中に手を入れると、感触は布。


なんだろうと思いながらそっと取り出すと、巾着袋だった。


でも、ただの巾着袋じゃなくて、お母さんの刺繍入り。


私のは吹奏楽の楽器、私より遅れて取り出した和希のは、サッカーのボールやゴール、ユニホーム。


私も和希も、高校でも部活を続けるって分かってたみたい。


「ちょっと子どもっぽすぎたかもって思ったんやけどね」


恥ずかしそうに笑うお母さんに、私は首を横に振った。


今は元気そうに見えるけど、体調が悪いから入院してる。


そんな中、いくら得意で好きな刺繍でもしんどかったはず。


長い時間かかったに違いない。


「お母さん、ありがとう」


大切に使うからね。