たった一度きりの青春は盛りだくさん




「え、和希、あの飴好きなん?」


どっちかというと甘いものは苦手なはずの和希。


飴を欲しがるなんて珍しい。


「そういう訳じゃないけど・・・」


ちょっと唇を尖らせて言う和希は少しだけ可愛い。


小さい頃に戻ったみたい。


「分かった。

忘れずに買っておくね。

じゃあ・・・パン本当にありがとう」


和希はまだ何か言いたそうにしてたけど、聞き出せそうになかったから私は手を振って和希と別れた。


でも、あの飴ってどこに売ってるんだろう。


達川くんにきくのはなんだか気が引ける。


あ、そっか、確か笑子ちゃんが知ってたよね。


後できいてみよう。


―――ガラッ


音楽室のドアを開けると、みんなが一斉に私を見た。


私、何かしたっけ。


「あー、良かった。

もしかして奈々ちゃん迷子になったかと思って」


笑子ちゃんがそう言うと、他の子も同じように『良かった』とか『安心した』とか言ってる。


そっか、私が方向音痴で、来るのが遅かったから心配されてたんだ。