「…ん?」

只今の時刻、午後11時。大雪の上に、こんな時間だ。それなのに、アパートの前に人が蹲っている。

私は恐る恐るその人に近づき、声をかけてみた。

「…ぁ、あの、どうかしました⁈」

手を差し伸べた瞬間相手が私に、あろうことか抱きついてきた。驚きと恐怖で、声を失った私に、相手が小さな声を出した。

「…寒い」
「…へ?」

え?寒い?私は相手の顔を見る…と、超絶のイケメンではないか!

「じゃなくて!ちょっと、あんた、凄い熱!家はどこ?送って行くから言いなさいよ」

慌ててそう言ったけど、イケメンの息遣いは荒く、意識朦朧としていて、家に送ってあげるのは無理そうだ。

「…寒い」

口を開けばそれしか言わなくて、私は仕方なく自宅に連れ帰る。一階で良かったと思いながら、私よりはるかに大きい、優に180センチは超える長身のイケメンをズルズルと部屋に入れると、服を脱がせ、兄貴のお泊まり用のスウェットを着せると、布団を沢山被せた。

「…寒い」
「…まだ寒いの?暖房が効くまで我慢してよ」

「…あっためて」
「…なっ!ふざけんな!そこで黙って寝てなさい!」

真っ赤な顔で怒った私は、着替えを持ってバスルームに向かった。