「きゃー、ペンギンカワイイー!見て見て、瀬名!」

…ついさっきまでドン底に居たはずの私が、今はハイテンションではしゃいでいる。

…仏頂面の私を、瀬名が連れてきたのは、水族館。私はすこぶる動物が好きだ。

アパートはペット禁止なので飼えないが、実家には、チワワ、トイプードル、猫2匹と、両親が飼っているので、実家に帰っては、動物達とじゃれている。

でも、この事は誰にも言わない秘密事項。バレたら、バカにされそうなので、絶対言わない。

「…さっきまでの仏頂面と、えらい違いだな」

そう言って、溜息をつく瀬名。でも、こいつならいいや。素の自分を見せたって、いつかは部屋から出て行く奴なんだし。

「だって、カワイイじゃない!あ!もうすぐイルカショーが始まる。行こう!」

…形勢逆転。今度は、私が瀬名の手を引いて行く。

…散々水族館を堪能した私は、イヤな事など、すっかり忘れてご機嫌。

「…ひゃっ。…これ」

突然後ろから伸びてきた両手。次の瞬間、冷たい感触が首を覆った。

…鮮やかな青のイルカのネックレス…と。

「わっ⁈…か、カワイイー‼︎」

私の手に、ペンギンのぬいぐるみ。

「…俺が居なくて寂しい時は、そいつを俺だと思って寝ろ」
「…なにそれ?」

「…帰るぞ」
「…え、あ、うん。瀬名、今日は沢山ありがとう」

「…看病の礼だ」

…、礼は言わないって言ってたくせに。

先に歩き出した瀬名の隣まで走って行くと、並んで家に帰って行った。