ともだち、こいびと、たいせつなひと


『強引でごめんね。だけど、立花とは登下校も一緒で、休み時間も一緒で、約束を守って姫菜と付き合ってくには、これくらい強引にしなきゃダメだと思ったんだ。』


「うん。そっか。そーだよね。うん、姫菜もごめん。」

さすがに部屋に通すのはちょっと。と思い、リビングへ案内すると、ソファーに座ったヨウくんが話し出した。


『俺、本当に姫菜ちゃんと付き合えたんだよね?夢じゃないよね?』


「うん、付き合ってるよ」

それなら…と、ソファーに座ったはずのヨウくんは、キッチンでお茶菓子を探すあたしの元まできて、後ろから抱きしめた。


びっくりして振り返ると


『姫菜。』


ここで初めて、彼を家に入れるべきではなかったことに気付く。


「やだ、待って、まだ!」

付き合ってたら当たり前にするであろう、唇を重ねる行為。
あたしはまだ、るーくんとだってしたことない。


だって、違うじゃん。
こんなんじゃないじゃん。

今までの彼だって、いつもるーくんが一緒だったから、そんな雰囲気にならなかったし!

何よりも。

るーくんじゃない人と姫菜は出来ない!


これは、ヨウくんだからとかじゃなくて。
姫菜がまだ、るーくん以上の人を見つけられないからで。
姫菜がまだ、るーくん以上に思える人がいないからで。