♠彼の気持ち

ある日、新の部屋を整理していた時小さな箱が出てきた。
その中には新の日記と1枚のCDが。
新が日記を書いていたなんて知らなかった。
私はその日記を手に取った。
その中には1日1日どんな些細なことでも書かれていた。
『~4月3日~結衣は何か隠し事をしている。そのせいか最近会話が少ない。不安…』
『~4月26日~結衣のお腹に俺達の子供ができた。本当に嬉しい。最近様子がおかしかったのはそのせいだって謝ってくれた。』
『~5月10日~最近結衣はよく食べる。俺ぐらいに食べる。でも、食べてる時の結衣の顔は好きだから止めない。』
『~6月27日~明日は結衣の誕生日。アイツの事だから自分の誕生日なんて忘れてそうだな。ケーキ買ってビックリさせてやろう。あと、あれも楽しみだな…。』
「なにこれ。私の事ばっかりじゃん。…私の事、ばっかり…。」
涙が溢れて止まらなかった。
私は日記を抱き締め声にならないくらいの小さな声で何度も何度も新の名前を呼んだ。
「新…。新、新…。」
少し落ち着くと次に中に入っていたCDを再生した。
するとその中には私の大好きな声が入っていた。

『あー、テスト。テスト。これでいいのかな。結衣誕生日おめでとう。これからもずっと一緒だからな。じゃあ、俺から結衣へ」
その言葉と共に儚いギターのメロディーが聞こえてきた。


『君を一目見た時から気になってた
だけど、こんな弱虫な僕には何も言えなかった

君の笑顔は太陽さ
その太陽はすごく暖かくて輝いていた
その太陽はきっと僕だけのものにはならないだろう
だから僕は探した
君の代わりを
でも、君の事を忘れられなくて
それどころか想いは強くなっていくばかりで

いつの間にか目で追って
いつの間にか好きになって
いつの間にか君だけしか見えなくなって
いつの間にか愛してた
君と出逢えたこと
僕の人生の中で一番幸せなこと
きっとこれからこれ以上に幸せなことはないだろう

ある日君はこんな僕に告白してくれた
僕のものになった君
なのに捨てられたらって不安が消えなくて
君に一生懸命になるのが怖くて君を傷つけた
自分でわかっていた
最低なことだって
君を失った後大切さを知った
君がどれだけ僕のすべてになっていたかを

君が好きだうまく言えないけど君が大切
君が好きだかっこいい言葉なんて知らない僕だけど
君が好きだどんなことがあっても君といれば幸せに感じられる

君の声を聞くだけで
名前を呼ばれるだけで
一目でも見られただけで
僕は羽が生えたように僕の気持ちは軽くなる
君と一緒にいられる毎日
幸せ以上の何物でもない

ずっと一緒それからどんなことがあっても
ずっと一緒例え明日世界が終わろうとも
ずっと一緒それだけは変わらない

君を1人にはさせない
僕が一生守って見せるさ
君だけを』


「ばか。新のばか…。」
1人にさせたじゃん。
一生守ってくれなかったじゃん。
嘘つき。
私の前で歌ってよ。
あの笑顔、もう一度見せてよ。
新の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え…。
それを繰り返していた。