♠戻ってきた幸せ
香side

「おぎゃーーーー!」
分娩室から聞こえる赤ちゃんの産声。
俺と、結衣の子。
名前は晴人(はると)。意味は字のごとく。
人に晴れやかな笑顔を届けて欲しいという願いを込めて。
これからは、結衣と俺と美羽と空と、晴人と5人で過ごしていくんだ。
それと、会社に戻ってきた結衣は今までよりたくさん働くようになった。
きっと結婚したからだろう。なんて。
結衣が気にしていた社長にはなることが出来た。
律のおかげでね。
ってことで、結衣は俺の専属秘書。
社長室も変えた。
周りから見えないようにブラインドをかけて。
ドアに鍵も付けた。だから、やりたい放題。

「結衣。お前また男と二人きりで仕事してただろ。」
「仕方ないでしょ。」
結衣が社長室に来た時に問い詰めた。
「社長、ここにサインお願いします。」
なんだよ。社長って。いや、社長なんだけどね。なんだけど。
気に食わない。
一番偉いから何でもできると思ってたのに。
結衣はちゃんと仕事してるから全然顔合わせられないし…。
「社長?」
俺は結衣に背を向ける。
「…香さーん。」
「…。」
「ぱぱー。」
だ、ダメだ!今振り返ったら!
「…香。」
!!!!
「結衣…。それは反則…。」
そう言って俺は結衣にキスをしようとしたんだけど…
「その前に、ここにサインください。」
「結衣。お前!」
結衣は私生活ではこんなにSじゃないのに!
仕事になるとこうなる。
「はいはい。…はいよ。」
「ありがとうございます。じゃあ、戻りますね。」
「…行かせるわけねぇだろ。」
「ちょっ!ん…。」
俺は結衣にキスをした。
ドアの鍵を閉め、
「何考えてるんですか!?」
「ん?いいこと。」
そう言って俺は結衣を押し倒した。

結衣side
もー!何考えてんのよ!
って言っても、流されてる私も一緒か…。
「結衣さーん!ちょっと来てもらっていいですかー?」
「はーい。」
「この書類の作成なんですけど…。」
「あー、これね。これはこうして…。」
私はそう言ってパソコンをカタカタと打つ。
「はい。終わり。」
「ありがとうございます。」
「いいえ。」
「あのー、あともう1ついいですか?」
「ん?」
「く、首のここが…。」
そう言って指をさしたのは私の首筋。
手鏡でこそを見ると、赤い印が…。
「相変わらずですね、社長も。」
「嘘!?」
なんか熱いと思ったらこれか!
「愛されてますね。」
「これじゃあ、まともに仕事できないじゃない…。」
「それもある意味目的だったりして…。」
「ん?」
「あ、いいえ。じゃあ、印刷してきまーす。」
「あ!」
もう、どうすればいいのよー。

そんな生活を送ってる私たち。
でもほかにも変わったことがあって。
琉さんと律さんの話。
この2人には本当にお世話になった。
律さんがお父さんに全部打ち明けたんだって。
琉さんが好きだってこととか、香さんと結婚をする気がないとか。
その話の最中にたまたま琉さんが入ってきて、逆プロポーズみたいになっちゃったらしい。
でも、その2人の行動を見てオッケーが出たって。
よかった。
で、今では子供もいる。
幸せになって下さい。