♠想い出
香side

「はぁ、はぁ、はぁ、」
俺は必死に走りながら結衣を探していた。
結衣といった場所、凛のところ、全部。なのに見つからない。
なんだか前にもこんな事があった気がする。
「どこだよ…。」
不意に漏れる言葉。
…。もしかして。
ダメもとで俺は自宅へ向かう。
俺にとっても結衣にとっても大切な時間を過ごした場所。忘れられない場所。
俺の読みは、当たった。家の前には1人の女の人が佇んでいた。
見つけた。
「結衣…?」
ゆっくりとこちらを見る。
「香…さん。」
結衣はもうぼろぼろだった。
「こんなところにいた。結衣。」
「香さん…。なんでここに…。」
「なんでってここ俺の家だし…。」
少し笑ってみた。
「香さん…私…。」
結衣は何かを伝えようとする。きっと謝りたいんだ。
「あぁ、いいよ。何も言わなくて。分かってるから。結衣の言いたいことくらい。でも、俺は「す」から始まる言葉が聞きたいな。」
結衣は言ってくれるだろうか…。
こんな俺に…。
「す、好きです…。大好きです。香さん!」
そういって結衣は走ってきた。

俺が聞きたかったのはこの言葉。
俺がほしかったのはこのぬくもり。
もう離さない。もう離れない。
ずっと一緒。
俺が死ぬまで愛しててやる。
俺が死んでも愛しててやる。

「俺もお前が大好きだ。」