♠私じゃない

そしてある日、友達の陽菜(ひな)の恋ばなを聞いていた。
陽菜はとても可愛くて同性から見ても可愛いと思うくらい、天使みたいな子だ。
陽菜はモテるのに理想が高いからなかなか彼氏ができない。
そんな陽菜の話を聞いているとある言葉が私の耳に入ってきた。
「私、新くんのこと好きだから告白しようと思ってるんだよね//」
その事を一緒に聞いていた凛と目があった。
そのあと私は目を伏せて話すことしか出来なかった。
私が新くんの事を好きなのは、
凛にしか言ってなかった。
すると凛は私の隣に来てみんなに見えないように私の手を強く握ってくれた。
やっぱり凛は私の事を何でもわかっていてくれる。

翌日、陽菜が告白した。
「私、新くんと付き合うことになった。」
私はその日凛の胸の中で大泣きした。
泣いて。
泣いて。
まるで小さな子供みたいに。
早く告白しておけば。
早く出会っていれば。
もっと早く…。
そしたらこんなに辛い思いしなくてよかったかもしれない。
私にもう少し勇気があれば…。
自分をたくさん責めた。
たくさん後悔した。

その日から私は、会いに行ったり話しかけるのをやめた。
当然、顔を見ることもなくなった。
最初は
「最近なんでそっけないの?」
って気にかけてくれたときもあった。
だけどいつもごまかしてた。
「俺のこと嫌いになった?」って聞かれたけどそれはちゃんと答えた。
「そんなことないよ」って。
でも、本当は「大好きだよ」の一言だけでいいから、伝えたかった。
それから、新くんの事を思い出すたびに辛くなった。
陽菜と付き合うんだったら、あんなこと言わないでよ…。
優しくしないでよ。
…あんな笑顔で笑わないでよ…。
私が勝手に勘違いてしただけなんだ。
新くんの事を責めるなんて最低だな。
私。

ある日、移動教室のためにこれまで避けていた新くんの教室の前を通ると新くんと陽菜が仲良く話しているのが見えた。
私には見せたことのない、笑顔で笑ってた。
「新ってすごいくせっけだよね。でも、可愛いかも。」
何気なく、新くんの髪に触れた陽菜の手。
いやだ。触らないで。
「そーなんだよ。中学の時は毎朝セットしてたんだけど、高校に入ってめんどくさくなっちゃってさ。あ、そうだ。今度うちに来てやってよ。そっから、デート行こ。」
「えー、しょうがないなー。…どこ行くー?♪」
何て会話が聞こえてくる。
楽しく笑わないで。
こんなの見たくなかったのに、足が鉄のようになって動かなくなる。
私は彼女でもないのにこんなこと思うなんておかしいよね…。

「なんか、新飽きてきちゃった。やめようかなー。いつまでたっても誘ってこないし。」
陽菜が口にしたこの言葉。
私は複雑な思いでいっぱいだった。
好きな人には幸せになって欲しい。
でも付き合えるかもしれない。
私が不意に発していた言葉、
「やめちゃえば?すぐに次の人見つかるよ。陽菜なら。」
私、いつからこんな嫌な女になったんだろう。
陽菜に嘘ついて、新くんを傷つけた。
こんなこと言うはずじゃなかったのに。
ごめんなさい…。