♠メッセージ
結衣side

私はその日、夢を見た。
それは新の夢。
そこは草原みたいで、周りには誰もいなくて。
心地いい風が吹いていた。すると、
「結衣。」
「あ、らた?新なの?」
「うん、そうだよ。」
「ずっと、ずっと、会いたかったんだよ?」
「俺もだよ。結衣。」
新は優しく私を抱き締めてくれた。
「ねぇ、聞いて?結衣。」
抱き締められたまま、新は私の耳元で囁いた。
「ん?なに?」
「結衣には幸せになって欲しい。俺の愛する人だから。」
「新?どうしたの?」
私は彼から体を離し顔を見た。
「香は結衣が好きだ。」
「どうしてそれを…。」
「兄弟…だからな。」
「新…。」
「結衣はお人好しすぎなんだよ。時には自分を一番に考えて欲しい。」
「自分の事を、一番に…。」
「うん。そう。きっと香は結衣を幸せにしてくれる。」
「でも、私には新が…」
「ほらまた。人の事考えてる。俺はいいから。大丈夫だから。」
新は私の話を遮った。
「そんなのダメだよ。出来ないよ。」
「結衣。俺はお前を幸せにできなかった。だけど、お前には幸せになって欲しい。
そうするには、香の力を借りなきゃいけないんだ。
俺と香は兄弟。だから俺が死んだって心は繋がってる。
もちろん俺と結衣もな。
だから、香が結衣を幸せにするってことは俺が幸せにするってことと一番近いんだ。
しかも、俺は香以外の男に結衣をとられるのが嫌なんだよ。
だから、お願いだから香も俺と同じように愛して欲しい。
俺は、いつでもお前のそばにいるから…。」
そう言って新は遠くなっていく。
「新!待って!新!」
新は優しく微笑み、見えなくなった。
そこで私は目が覚めた。
「…新。私、新の気持ち受け取るよ。ありがとう。」

香side

「結衣。おはよう。」
「あ、香さん。おはようございます。」
「よく眠れた?」
「はい。」
「で、早速なんだけど昨日の話…いい?」
「あ、はい。あの私昨日新の夢を見たんです。」
「アイツの夢?」
「はい。…」
結衣は昨日見たと言う夢の話をした。
その話の途中俺は涙を流した。
新がそんなこと思っていたなんて知らなかったから。
結衣がその話を終えた後、俺は心の中で結衣を幸せにする、と誓った。
「新の願いは俺が叶えてみせる。だから、結衣。俺はお前が欲しい。」
「はい。香さん。私もです。」
俺はまた結衣を抱き締めた。
今度は結衣も俺の背中のシャツに腕を回しシャツを強く掴んだ。

それから、結衣が退院した。
だからといって生活に全く不憫がないわけではない。
だから、結衣をうちに住ませることにした。
付き合っているから問題はないだろうと俺は無理矢理結衣を家に連れてきた。
最初は一緒に住んでいても俺が仕事ばかりでなかなか目を合わせて話すことは出来なかったけど、休みの日は一日中一緒にいるのが当然になった。
そういう日は琉も気を利かせて家を出て外に遊びに行く。
誰とも約束していなくても。
琉のそういうところは変わらないな。