暁のプロポーズ

《指輪》

──結婚…するには、やっぱ指輪だな。

職場での休憩時間。
そこでも考えるのはプロポーズの事だった。

──貯金はある。結婚指輪…は給料3ヶ月分とかいうが、婚約指輪はどうなんだろう。

カシュ、という音を立て缶コーヒーを開ける。

『結婚指輪』と『婚約指輪』は違うものだ。
『婚約指輪』とは男から女へ、《結婚を約束するために送る指輪》である。
そのため、《プロポーズ》に使う指輪は《婚約指輪》だ。
一方、《結婚指輪》は《結婚式に交換する指輪》であり、基本《ペアリング》になっている。

──んー…やっぱ同じくらい価値のあるものがいいな

凪に一番喜んでもらえるようなプロポーズにしたい、という思いが真人に妥協を許さない。
携帯を開き、指輪について調べようとしたその時、
凪からメールが来ていた。

『お仕事頑張ってね!』

その一文の下には、エプロン姿で自撮りをしている凪の写メが添付されていた。

──あ〜…かわいいぃぃぃ〜。嫁に欲しいわぁ〜…

相変わらず、デレデレな内心とは相反して、表情は一切変わらない真人であった。