人魚花


──そして次の日の朝、<彼女>はひとりぼっちになっていた。


「……私も、すぐに向こうに行くから」

もとは美しい緑色をしていた、枯れ果てたその姿に<彼女>はそう声をかけたのを覚えている。

けれども何故か、次の日も、その次の日も、<彼女>が枯れることはなく。

来る日も、来る日も、冷たさと息苦しさに耐えながら、<彼女>は一人孤独に漂っていた。

いつになったら枯れるのだろう、いつになったら皆の場所に行けるのだろう。そればかり考えながら漂う水中は、ひどく色褪せて、光が差さないように感じた。


──いや、実際にそうなっていたのだ。湖だった場所と海は、いつしか完璧に一つに繋がっていて、そこは暗く閉ざされた入り江となっていたのだった。

(これはきっと、『罰』だ)

そうして毎夜、どこか澱んだ暗い水面越しに双子の月を眺めながら、<彼女>はそう思うようになっていた。

(『何もしてくれない』と諦めた私に、海神様が与えた、罰だ)

──それも、諦めていた『生』を与え、長い間孤独にさらすという、何よりも残酷な方法の。