コンコン。

男は大学の旧校舎の一番奥の教室をノックした。

「開いてるよ。」

扉の奥から声がした。

「し、失礼します...く、工藤さんいますか?」

「僕がそうだけど。」

「あ!こ、こんにちは。僕は...」

「用件」

「えっ?」

「だから、用件は何?用が無いなら帰ってくれないかな。暇じゃないんでね。」

「あ、あの。実は、知り合いに頼まれて来まして...」

「それじゃあ、そいつが来ればいいじゃないか。」

「そうですよね。出直してきます。」

男はドアノブに手をかけた。

「何処に行くんだ。早く用件を言ってくれないか?」

「えっ。いいんですか?」

「誰が駄目と言ったんだ。いいから用件を言え。言ったろ?暇じゃないって。」

「あ、はい!実は、行方不明になった人がいるんです。」

「で?」

「あ、いや。その人を探してもらいたいと思いまして...」

「顔と名前、それといつからいなくなったのか教えて。」

「この人です。名前は田澤健太。いなくなったのは今年の4月です。」

男はテーブルの上に写真を置いた。

「4月?それじゃあ、半年以上もいないのにほっといたのか?」

「ちょっと旅行してくると言っていたそうなので。」

「へぇ。で?こいつとあんたの関係は?」

「あ、いえ...知り合いに頼まれただけなので僕は...」

「...とりあえず探してみる。」

「あ、ありがとうございます!!」

「で、あんた名前は?それと、学年。」

「あ、一年の花田琳太郎です!」

「琳太郎ね。了解」