「ま、待って下さいよ 宮本刑事!」

山本達也が坂を駆け上がりながら言った。

「うるせぇ!お前が遅いのがいけないんだろ!少しは鍛えろ!!」

宮本剛。熊の様な男だ。

「で?どうだったんだ?たけちゃん。」

「だから、その名前で呼ぶなって言ってんだろ!!」

「いいだろ。たけちゃんで。」

桑田竹男。宮本とは幼馴染みで、「たけちゃん」と呼ばれている。

「で?」

「あぁ。ダメだったよ。ここまで真っ黒にされちゃあ。」

「そうか。」

中学校のボイラー室で、真っ黒に焦げた死体が見つかった。

最初に発見したのは放課後に見回りをしていた警備員だった。

「完全に焼かれてる。これは屍蝋にしたな。」

「え?し、しろ...なんだって?」

「屍蝋だよ」

「だから、そのしろうってなんだよ!」

「屍蝋っていうのは、要は蝋燭人間みたいなものですよ。
死体を水中や湿度の高く空気の流れの悪い場所に放置すると、脂肪が分解されて蝋状に変化するんです。それくらい知っておいてくださいよ。刑事なんですから。」

「悪かったな、バカで。」

「そこまで言ってないです。もしかして、自覚あるんですか?」

「てめぇ!」

「お。彩ちゃん。いつ来たんだ?」

「先ほど。それと、ちゃん付けはやめてください。桑田さん」

工藤彩。頭がよく切れる現役女子大生。よく捜査を手伝ってもらってる。

「いいじゃねぇか。彩ちゃんで。」

「皆さん!捜査を進めましょうよ!」

山本が言った。

「あぁ。わかってるよ!」

「今回は結構大変そうですね。」

「そうだな。まず、身元がわからねぇからな。」