鼻を摘んで目を閉じて…

 たしか、こいつが引っ越す中学直前くらいまで、そのイジメは続いたと思う。

 なにがいけないのか、聞こうと思って近づくと決まってえらい目にあった。



 
 「し、信じられない。そんなくだらないことで」

 「…しょうがねぇだろ。若気の至ってやつだな」




 なにが、若気の至だよ!?

 親切が仇になるとは。

 フラフラッと目眩を感じつつ、長年の謎が解けて複雑ではあるけど、まあある意味すっきりしたかも。

 しょせんは子供の頃の話だしね。

 いつまでも執念深く恨んでなんかいられない。

 ただ、どうして、自分が他人にそこまで嫌われなければならないのか、なにかしてしまったのか、けっこう苦になってた時期もあった。

 イジメそのものは、さすがに暴力を奮われるとか、友達全員に総スカンを食って無視されるとかじゃなくって、せいぜいこいつからの個人攻撃と男の子達からのイタズラが主だったから、逆に女の子たちの結束は固まったりして、庇ってもらってたくらいで、恨みが深いというほどじゃなかったかな、たぶん。

 だからって、いいって話でもないかもしれないけど。




 「おい、もう戻るのかよ」

 「そろそろ、帰らないとまずいし」




 なんかいっきに疲れた気がする。

 それに、いくらなんでもただ書類を届けに行って、帰るのに時間とりすぎよね。
 



 「書類は持って帰らなくていいのか?」

 「あ!」




 忘れてたよ。

 反省。

 そもそも、そのための時間潰しで、この男と寒空の下でコーヒー飲んでたんだっけ。




 「そろそろ眞城も戻っただろうし、俺も戻るか」




 横に並んだ浩志を見るともなく見上げて、ふと、




 「あれ?」