その日の吉澤さんはご機嫌に見えた。

隣でずっと

「寒ぃ〜〜暖房つけていい?寒ぃ〜〜!!!」

まるで方向指示器の件なんか忘れてるみたいでホッとした。

「バイクの教習さっきまでやっててさ〜寒い寒い.....ほら!冷たいっしょ??」



吉澤さんの手は、私の手に重ねられた。

女子校出身の私、これは一大事。
いくらおじさんとはいえ、車の中で2人っきりで、手が重なってるこの状況。しかも夜のドライブ。まさにパニック。

「あっ!ごめんね女の子の手触っちゃった!ついいつもの癖で(笑)」

『えっ??(笑)』

「な〜んて冗談冗談(笑)」

その後も、

「な〜んか暗いから眠たくなってきちゃったなぁ〜〜寝ていい?(笑)」

『えっ!ダメ!ダメです(笑)!』

「休みの日とかなにするの?カラオケ?何歌うの??」

こんなゆる〜い会話してたら終わりの時間。


あんなに怖かった吉澤さん....今日でちょっと見直しちゃったかも...ちょっと楽しかった....




手冷たいでしょのやつ。松崎さんにされたい...夜の路上教習、松崎さんとしたいな....
ドライブデート....



そんな妄想を膨らませて、
波乱の初路上教習は終わった。