もう一度、僕に恋をして。






「まぁ俺も次の恋愛いけ!とか無理強いはしないけど、でもさっきのお前そんなような感じしたから…でも勘違いならわりぃ」

「うんん、大丈夫だよ…」

「折崎さんか、大人だよなぁ」

「うん」





俺もあんな大人の色気ムンムンなイケメンになりたい。




そういいながらポテトを次々と食べまくる隆弘に、僕はいやだと思った。




隆弘は隆弘でいて欲しい。




頼もしくてずっと、僕の大事な親友だ。




それに本人は気づいてないけど、瞳がぱっちりしてて、愛嬌があって充分イケメンだと思う。




だからこのままで、いいと思った。




「隆弘は隆弘でいいんだよ、そのままでいて欲しいなぁ」




面と向かってだと恥ずかしいから、あえて視線は手元にあるグラスに向けて、伏し目がちに言った。





「ありがとうな」



しばらくしたあと、隆弘のぶはっと吹き出すような笑い声が聞こえたのち、そんな返事が返ってきた。




僕は伏せていた視線を、再び隆弘に向ける。





「お前さ…」

「ん?」




すると大人っぽい真剣な眼差しで、僕を見つめる隆弘に、一瞬ドキッとびっくりした。




「可愛いな」

「へ?!」





そして意外で、予想していなかった、「可愛いな」というその言葉に僕は、さらに驚愕した。




「周りがさ、お前のこと可愛いとか言っててさ…正直よくわかんなかったんだけど、なんかわかっちゃったわ」

「えと…隆弘?」

「楓純、お前って可愛いよ」

「…っ!」





ニコリと笑う隆弘は、いつもの隆弘ではないように思えて、なんだかとても違和感を覚える。





「…何それ、彼女さんが聞いたらびっくりするよ?」

「可愛いって思っちゃったんだから、言うしかないだろ」

「…へ、へんなの!」





妙に変な空気を変えたくて、「あはは」と明らかに愛想笑いって感じではあったけど、笑みを浮かべてグラスの底に微かに溜まっていたカフェオレを飲み干した。



隆弘に「可愛い」とか、ドキッとするよりかはびっくりと言った感じ。




不思議だ。



折崎さんがいうと、胸がくるしくてたまらなくなるのに。



鎖骨あたりがくすぐったくなって、そこをふと触る。



すると隆弘は突然立ち上がった。





「ま、今日はありがとな!真綾に会ってくるよ」



そしてさっきとは違っていつもの、ハツラツとした満面の笑顔でそう言って身支度を始める。





「え、バイトは?」




飲みものや、ポテトの空箱をトレーに載せて椅子を元に戻すと




「まだ時間あるから大丈夫」




そう言って、僕に「早く出ようぜ」と促してきた。




「楓純、気をつけて帰れよ」

「うん、隆弘もね!ちゃんと仲直り出来るといいね」

「あぁ。そしたら報告する!」

「うん」

「じゃ、また!ご馳走様」

「またね!」




挨拶を交わして、僕と隆弘はそれぞれ反対方向に歩き出す。



だけど、




「あ、楓純!」



背後で僕の名を呼ぶ隆弘の声に、呼び止められて振り返った。




「お前もなんかあったら、俺に報告な!」




僕はその言葉に目を見張る。



なんかあったら…。




あるっちゃあるけど…隆弘に言えないままでいる。折崎さんのこと。隆弘に打ち明けたらどうなるのか、怖くてまだ喋る気は無い。



だからニカッと笑みを浮かべる隆弘に、「うん」と肯けないまま、その場にしばらく立ち尽くした。