また、脳裏に過ぎった疑問を即座に払うように打ち消した。





「…る…く…?」

「……」

「楓純くん!」




しまった。


考え込んで、折崎さんの顔をじっと見つめたままでいたせいか、不思議そうな表情の折崎さんは、僕の肩を掴んで顔をのぞきこまれた。







「…あ、えっと……」

「どうしたの?俺の顔じーっと見つめて」

「…いや、その…」




なんて言ったらいいんだよ。




ありのまま、折崎さんのこと考えてましたとか言えないし。かと言って何も言わない訳にもいかないし。




「まーさか~俺に見蕩れてた?」

「えっ?!」

「あはは、冗談だよ…間に受けないでって」





あどけなく笑って、僕の肩を叩きながらそう言う折崎さんに、不覚にもまたドキッとしてしまった。




見蕩れてた……という感じなんだろうか。




いや…違うかもしれないけれど。





でも折崎さんの顔を見つめながら、折崎さんのことを考えていたってことは…そうなのか?そういうことになるのか?




「…まさか図星?」

「…っ!」

「えっ…」





どうしよう!





否定しなきゃなのに、なぜだか何も言えない。




違うって、言わなきゃなのに。




その先を聞かれたらなんて答えたらいいかわからないし、それに否定も肯定も出来ないような複雑な気分だった。




「え、本当に?」

「……えっと」

「…っ!」

「あっ…折崎さんっ…」





いっそ、そういうことにしておこうかと下を向いたとき。




僕は折崎さんに突然、腰に腕を回されてハグをされていた。





「ごめん、でも…このまま」

「…はい」





折崎さんの言葉に、そう肯きながら同じようにそっと折崎さんの腰あたりに手を添えて、そのままワイシャツ少しだけぎゅっとした。