確かなのはさっきまで彼女と噛み締めていた愛情と幸せがだんだん鎮静化しつつある、ということのみだった。
「どういうことか説明してくれないかな?僕こそこの人誰?って感じだし、そもそも僕はいつ凜菜の元カレ兼ストーカーになったのかな?…というかそうなるとこの男とキミは付き合ってるってことになるんだけど、間違いない?」
矢継ぎ早に飛び出てくる言葉に、刺を仕込んで彼女にぶつける。
「……ごめんなさい、実は…そのことで今日お話ししたくて…呼んだの。でもまさか昌樹くんがいると思わなかったし…ちゃんと、けじめもつけるつもりだったの」
大きい目に涙がうっすらと溜まっていく、凜菜の瞳は下を向いたまま、僕を見ようとはしなかった。
「…彼を選ぶんだね」
「っ!……ごめんなさい」
テーブルに頭をつけてしまいそうなほど、深く頭を下げて謝る彼女に、僕はだんだんと頬に浮かべていた笑みが消えていくのがわかった。
「は?ちょ、凜菜…俺まじいま置いてきぼりなんだけど…どーいうこと?こいつ元カレじゃねーの?」
「君は黙っててくれないかな」
「は?」
突如話に割って入って勝手に困惑する男に、人睨み効かせるとまた凜菜に視線を向ける。
「理由は?」
僕が次に出した声は、自分でも驚くほど冷たいものだった。
その声に、びくっと体を震わす彼女の目からポツリと1粒の涙がアイボリー色のテーブルに落ちる。
「…だって…楓純があまりにも可愛いすぎるから、なんか…劣等感っていうか…次第にむかつくようになってきて……」
僕は彼女のそんな言葉に、とてつもないほど大きな衝撃が身体中を張う感覚を覚える。
何だそれ…。
