そしてこの間のキスを真似て、驚いて緩んだ隙に舌を忍び込ませた。





その際に互いの唾液が混ざり合って、なんとも艶めかしい音が響いた。




見様見真似ではあったけれど根こそぎ絡めて、あの時みたいな気持ちよさを求める。




気持ちよさ?




今僕は……。



あの時のキスが、気持ちよかったとか…思った?




「っ!」





一瞬、ちょっとだけ我に戻ってフリーズしてしまった。



でもそんな僕を逃がさないとでもいうように、今度は折崎さんの舌が動き出す。




「ふぁ…んっ……」

「…全く…」

「んっ……ぁ……」

「楓純くんってば……」






キスをしながら喋るせいで、吐息とかかかって余計に熱が篭る。




今の僕はどうにかしてる。




それすらも、“気持ちいい”と思ってしまった。







「今日は…っ…素直、だね」

「…んっ…」

「俺で…俺だけを求めて?」

「おり…さき…さぁ…んっ」

「そう、俺だけを…見てて」





不思議だった。



彼とキスをすればするだけ、凛菜のことを自然と忘れられた気がした。





もしかして、本当に凛菜を忘れられるのか?




忘れられる、チャンス?





理性と希望の間で、気持ちはたゆたう。その間も彼からの甘いキスを、心地よさを感じながら受け入れていた。






+ + +





そして、あれから数時間が経った。




キスはあのあと、折崎さんがこれ以上は無理と言ってやめて、オムライスを再び食べ始めて、テレビゲームをしたりした。




だけどデザートを食べる時、はんぶんこしようと提案したら、「いいよ」そう行った折崎の行動に、




僕はまた、おかしくなりそうだった。



だって、レアチーズケーキをフォークで一口サイズに掬ったと思ったらおもむろに自分の口元に持って行って、そのまま食べると、




そのままキスされて、その瞬間レアチーズの味がして、口移しされたから。



甘く絡む舌先に、しっとりとした滑らかな感触のクリームチーズが混ざって、それが妙にいやらしくて。





そのことに唖然としていると、今度はマカロンでポッキーゲームを始めるし。




折崎さんって…なんか…。




よくそんなこと思いつくなぁと思う。



そういう経験があるのか、単なる知識なんだろうか。




とにかく僕はされるがままなこととにとてつもない恥ずかしさを感じて、すぐさま折崎さんから離れて自分のチョコレートケーキでお口直しした。



それにまた豪快に笑われて、案の定僕は拗ねて、ゲームで仕返ししようと対戦を申し込んだけど、あえなく敗北に終わった。




まぁ、そんなこんなで今は折崎さんを最寄り駅まで送っている途中だ。





心なしか家に来る時よりも、距離は近くなってる気がする。






「楓純くん、今日はありがとう」

「いえ……僕の方こそ」

「許してくれて…嬉しい」





少しだけ上を見上げながら、まっすぐ何かを見据えるような表情に僕は目を逸らせなかった。




かっこいいなぁ。





…って、え?



え、あっと……僕、今…。





なんで、男にかっこいいとか。




いや…憧れ的な意味で言うことはあるかもしれないし、おかしくはないのかもしれないけれど!