もう一度、僕に恋をして。




そんな様子を案の定見られていたらしくて、そうからかう折崎さんを、僕は睨みつけた。



でも、全く効いた様子はなくてむしろさっきよりも楽しげに笑ってる。



僕はもう、なにも通用しないと思って睨んだまま、




「い、いいから!オムライス運びましょう!そんで、食べましょう!」



オムライスを片手にとって、そう指示をした。



全く、この人といるとほんっとーに調子狂うんだけど!




「いただきまーす!」




リビングに2人分のオムライスを運んで、ソファーの前に座ると折崎さんは顔の前で手を合わせて、早速オムライスに手をつけた。




さっきまで、ちょっと荒だたしかった気分は折崎さんがオムライスを頬張ったことで、ちょっとだけ緊張しだした。




どうだろうか。



バターがちょっと効きすぎたかなって思うんだけど…。




「んー!おいしーい!なにこれ、めっちゃ美味しいじゃん!」




どうやら僕の心配は、要らない心配だったようで



ニコニコと声を張ってそういう折崎さんに、僕はホッと胸を撫で下ろした。



そして、僕も1口すくって口に運ぶ。



折崎さんが美味しいって言ってくれた、僕特製のオムライス。



いつもと変わらない味なはずなのに、やけに美味しいと感じた。




変なの。



まるで恋人に初めて手料理を食べてもらった彼女みたいじゃん。



…って、まさか…いやいやいや、ありえない!ありえないからっ!




なんでそんな例えばなしを思い浮かんだわけ?!絶対違う!



僕が折崎さんを?…恋愛的な意味でとか…。




そんなはずはない。




でも…じゃあなんでキスされると、あのキスを思い出すと、擽ったい感覚が生じるのだろう。




一体、僕は…この人を。


折崎さんをどんな目で見てる?





「楓純くん?…食べなよ、冷めちゃうよ?」

「あぁ、すいません」

「なに?俺んとこ見つめて~」




ちょんちょんと僕の右腕をつっつきながら、顔だけを近づけて、にやりと口角をあげながら僕の顔をのぞき込んだ折崎さんは、




そのままくいっと僕の顎先を掴むと、自分のところまで引き寄せた。




や、やばい!



このままじゃ…また、キスされちゃうよ。





「楓純くんからなら視姦されてもいいとは思うけどね」

「~~っ!」

「離せって?ん~……どうしよっかなぁ?」




顎をつかんだまま、目をそらして考え込む折崎さんに、僕はやめてと訴える。




「じゃあ今度こそ、君からキス…してよ」




だ、ダメだ。



キスフラグから抜け出せない。




なんとかして回避しなきゃ。




今度こそ僕は……





って、え?




今、なんて言おうとした?思った?




“今度こそ僕は、彼から与えられる温度と快楽に溺れてしまう”




僕は自分の頭に過ぎった、その言葉に疑った。




なんてことを、思ったのだろう。




溺れてしまう…だなんて、意味深な。





「いや、です…」




僕は必死で自分に抗った。



理性を保たなきゃ。



僕は男で、折崎さんも男。




キスなんて…しちゃダメなんだよ。





「かーおーるーくーん?」

「…っ!」

「早く、して?」

「いやっ…」

「まだハードル高い?」




高いも何も、そんな問題ではない。



もっと、重大な問題だ。




「じゃあ、今日は俺からするね」

「いや、あの、…っん」




問答無用みたいだ。



いやだと抗うすべもなく、彼の唇がまた僕の唇に触れた。




柔らかくて、あったかい温もりにされるとわかってはいたのに、肩がビクッと揺れた。



熱い。



触れ合う唇も、絡み合う指先も―――。





角度を変えては繰り返される、嵐みたいなキス。




それだけなのに、なぜだか身体が震える。




ゾワゾワっとしたこそばゆいような感覚が、背中から全身に伝っていって、僕はたまらず折崎の腕に手をあてがった。



そして。




やめて欲しい。嫌だ。




さっきまで心の中を渦巻いていた拒む気持ちが、自然となくなっていて、気づけばもっとって彼から与えられる快楽を欲求しているみたいに、




腕にあてがった手を、今度は彼の首に回していた。





「…っ…かおるくん?」

「…め…な……で…」

「え?」

「…やめないで」

「え、かおっ…んっ」





もう、どうしたらいいか。



何を言っているのかなんて、自分のことなのにわからなかった。




ただ目の前にある感触に、温度に僕は手を伸ばしたんだ。





まさか僕からキスをされると思ってはいなかったんだろう。



現にさっきまで拒んでいた僕がいたのだから。





でも今は鏨が外れたように、彼の唇に自分のをこすりつけていた。