「つーかこの前話してた元カレじゃね?」
「…あの、昌樹くん…」
「まさかまだ詰め寄られてたのか?」
「…っ!」
「心配すんな、俺が守ってやっから!」
次々と繰り広げられていく二人の会話に、僕はくすっと思わず笑ってしまった。
そういうことか。
つまり凜菜は陰で浮気して、その浮気相手に僕は凜菜の元カレでしつこく付き纏ってくるストーカーにされていたと?
友人でもなんでもなく、それ以上の関係を持った人だったんだ。
「てめぇ、なに笑ってんだよ!凜菜の前にのこのこ現れてよっ!」
「だからっ、昌樹くん!」
「なんだよ、大丈夫だって…なんかあったら警察に突き出しゃーいいから」
「…っ、やめて」
僕は今にも泣き出してしまいそうなほど震えている凜菜をまっすぐ見据えると、「僕も聞きたいな」と言って顔の前で手を組んだ。
「えっっと……」
あきら様に動揺している。
目が泳いでいて何度も空中を見回したり、かと思えば作り笑いをして、首をかしげたり。
ていうか何でだろう、ひどく冷静な自分がいる。
目の前の彼女に苛立つことも、男を殴りたくなる衝動も、この場から飛び出して逃げるなんて選択肢すら僕の頭の中には、なかった。
ただ、ひとつ。
あるとすれば。
