「あぁ、楓純じゃん!ナイスタイミーング!」





と、満面の笑顔で僕に手を振る。






ナイスタイミング?





隆弘の意味不明な発言に内心、首を傾げながら隆弘に向かって歩いていると





隆弘の背後からひょこっと顔を出した人影が見えて、






その瞬間、僕は思わず足を止めた。







……な、んで。







どうしてっ……彼が、ここに?






バイト先なんか教えてな……。






もしかして、兄貴か?






僕は正直、このまま傍に駆け寄るか迷った。






今…最も避けている元凶の彼が。





折崎さんが、隆弘の隣で微笑んでる。





…でもおかしい。





あんなに考えないようにして、避けていたのに。





顔を見れて、その笑顔を見れて…。






嬉しいというような、謎の安心感っていうか。





そんなような感情が、心に降って湧いてくるように僕の心を満たされてゆくなんて。






「おい、早く来いよ…この人がお前に会いたいってわざわざ来てくれたんだぞ?」

「え?」

「こんばんは」

「こ、こんばんは……」





なんで、僕に会いに来てくれたんだろう。





そしてなんで僕は、“会いに来てくれた”ということに嬉しいなんて思ったんだろう。




自然と、心が暖まってゆく。





どうして?




僕自身ですら、わからない。





「芹田くん、ありがとうね」

「いえ、じゃあ俺はこれで!」




くどいようだけどちゃんと休めよ。




隆弘は僕を見て、頭をなでると僕が来た道とは逆の駅方面への道へと姿を消した。





「楓純くん、これから時間あるかな?」





僕は隆弘の後ろ姿を見送りながらそのままそちらに顔を向けていると、折崎さんは僕に視線を向けてきた。