まるで解き方を知らないのに、テスト問題を解いているかのような、そんな感じだ。
ダメだ。
これ以上、折崎さんといたら―――。
流されてしまう。
そんなの、ダメだって頭ではわかってて、
逃げたいのに。
そのまま人差し指を退けると、僕の強ばる肩を押し倒して、ベッドへ寝かせると、顔を近づけてきた。
やばい。
この体勢は、逃げることができなくなる!
「やだ!…折崎さっ…ンッ!」
必死に足掻くも、それは無駄とでも言うよな折崎さんの艶やかな微笑みに囚われて、そして――――また唇を重ねてきた。
今度は触れるだけのフレンチなものを何回かしたあと、僕の固く閉じた唇の割れ目を舌で淵取る。
そのこそばゆい感覚に、驚いて思わず数ミリだけ開けてしまった隙をついて、そのままねじ込むように割り込んだ。
初めての感覚に、僕はただ溺れてしまわないように理性を保つのに必死だった。
折崎さんの肩にあてがって抵抗する手を、力を強める。
そのたびに、どんどん深く甘くなってゆくキスに、
僕は辛くて、だけど…確かな心地よさを感じていた。
それに心地よさなんて感じてはダメなのに。
互いの舌が絡む度、いやらしい音を奏でるたび、僕を襲う痺れる甘さに、躯は震える。
怖かった。
とてつもない恐怖心に蝕まれてゆく。
僕の中で何かが外れた音がした。
それが怖かった。
まるで元の色から違う色に塗り替えられてゆくようで。
たまらなく、怖くなって。
だからか、力いっぱい折崎さんを押し退けると、そのほっぺたを叩いていた。
「…はぁ…はぁ…っ…」
「…っ!」
あまりの激しさに息が切れ、もはや肩で息をする僕。
叩かれた衝撃で唖然とする折崎さんとしばらく見つめあったまま、動けなかった。
数秒後、僕はとんでもないことをしてしまったんだと気づいて、早急に頭を下げて謝っていた。
「すいません、叩いてしまって…あの、でも心地よくなって…それにビックリして…怖くて…で、気づいたら……僕っ……ご、ごめんなさい!」
どうしよう、傷つけてしまったかな?
そんな思いからパニックになり、しどろもどろになりながら言葉を紡ぐ。